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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《江戸芸術論(えどげいじゅつろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 85,130 字 · 167 頁
ゴンクウルはその探索蒐集せる資料を鑑賞し玩味しこれによりてひたすら芸術的感覚の美に触れん事を求めたり。然ればその十八世紀に対する考証研究の態度は毫も詩歌小説創作の心境と異る所なく熱烈にしてまた繊細なる感情に満ちたり。佳麗なる仏国の十八世紀はゴンクウルの芸術的感覚を衝動して止まざりしなり。偶然江戸時代の応用美術品を手にするやこの仏国十八世紀の追慕者は忽ち日本十八世紀の称賛者となれり。
十八世紀日本美術の研究に関するゴンクウルの計画は頗浩瀚なるものなり。彼は先づ画家五人を挙げ、次に蒔絵、鋳金、彫刻、象牙細工、銅器、刺繍、陶器各種の制作者中各一人を選び、その代表的制作品を研究し、応用美術が完全に自由美術の品位と境域にまで到達せる処は世界に唯日本あるのみなりとの論断を下さんと欲したり。然れども不幸にしてその志を果さず僅に歌麿北斎二家の詳伝を著したるのみにして千八百九十六年病みて巴里の寓居に歿したりき。
歌麿伝は千八百九十一年(明治二十四年)に出づ。当時英仏の好事家中浮世絵を愛玩するもの漸く多く、これに関する著述の出版また尠からざりき。然れども特に一画家を選み来つて全巻これが研究に費せしものなし。