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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

ねえ支倉君、あの神秘の扉を開く鍵は、隠れ衣をつけたジーグフリード――この隠語一つの上にかかっているのだがね、いずれは防堤の上で、君にその姿を、御覧に入れる機会があるだろうよ」

検事には、すでに言葉を発する気力がなかった。

ただ彼は、ニーベルンゲン譚詩を繞って、二つの旋律が奏でられているような気がしていた。自分が弾き出すと、いつも法水は、その上をいって、またその二つが絶えず絡み合うのだが、そうしていつ尽きるか涯しない迷路の中を、真転びひしめき行くように思われた。

すると法水は、それまでにないひたむきな形相をして、言葉を次いだ。

「というのは、あるいは妄想かも知らんがね、実はある一つの、怖ろしい事実を知ったからなんだ。だから、一人の名を知れば、それでいいのだよ。ねえ支倉君、このモヤモヤした底知れない神秘――事実まったく迷濛たる事件じゃないか。ニーベルンゲン――暗い霧の子、霧の衣、ああ霧だ霧だよ、霧、霧、霧……」

と法水の手が、頸の廻りをかいさぐると、握った指の間から、すうっと這い出るように海霧が遁れて行くのだが、さてそうして開いた掌には烟の筋一つさえ残らないのである。