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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁
その指のしなだれ、燐火のような蒼白さには、ただでさえ、闇中の何物かに怯やかされていることとて、検事は耐らず、灯を呼びたげな衝動に駆られてきた。
しかし、それは結論を述べる、法水の意外にも落着いた声で遮られた。
「そこで、僕が云うジーグフリードとは、いったい誰のことか。ジーグフリードのいないニーベルンゲン譚詩――この事件は、まさにそれなんだ。つまり、事件の解決は、あの大古典の伝奇的なつながりの中にあるのだ。ああ支倉君、紙魚に蝕ばまれた文字の跡を補って、トリエステで口火が始まる、大伝奇を完成させようじゃないか」
ジーグフリード……別名は?
それは事によると、芝居気たっぷりな法水が、暗にシュテッヘを差しているのかも知れず、もしくはまた、彼の卓越した心理分析によって、なにか会話の端からでも、新しい人名が掴み出されたのではないかと思われたが、そうして、検事は悪夢の中を行きつ戻りつしているうちに、いやが上にも謎を錯綜とさせる、法水を恨まずにはいられなかった。
そこへ、書架の横にある扉が開いて、朝枝の蝋色をした顔が現われた。
彼女が手にした洋灯を、卓子の上に置くのにも、その痩せた節高い指が、痛々しく努力するのを見て、法水は憐憫の情で胸が一杯になった。