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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
一つ先生も仲間へ入れてくれないかね。お前たちの市場ではどんな物を売って居るんだい。先生もお札を分けて貰って一緒に遊ぼうじゃないか」
こう云った時の貝島の表情を覗き込むと、口もとではニヤニヤと笑って居ながら、眼は気味悪く血走って居た。子供たちは此れ迄に、こんな顔つきをした貝島先生を見た事がなかった。
「さあ、一緒に遊ぼうじゃないか。お前たちは何も遠慮するには及ばないよ。先生は今日から、此処に居る沼倉さんの家来になるんだ。みんなと同じように沼倉さんの手下になったんだ。ね、だからもう遠慮しないだっていゝさ」
沼倉はぎょっとして二三歩後へタジタジと下ったけれど、直ぐに思い返して貝島の前へ進み出た。そうして、いかにも部下の少年に対するような、傲然たる餓鬼大将の威厳を保ちつゝ、
「先生、ほんとうですか。それじゃ先生にも財産を分けて上げましょう。―――さあ百萬圓」
こう云って、財布からそれだけの札を出して貝島の手に渡した。
「やあ面白いな。先生も仲間へ這入るんだとさ」
一人が斯う云うと、二三人の子供が手を叩いて愉快がった。
「先生、先生は何がお入用ですか。欲しい物は何でもお売り申します」