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こぞうのゆめ

潤一郎ラビリンスV――少年の王国

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁

青空文庫

だが、この忌まわしい根性が直らぬうちは、菩提の道へ志したとて何の効があろう。たとい六波羅蜜を修し、五戒を守っても、頭の中の妄想が一期の障りとなって、まろは永劫に、輪廻の世界から逃れる事は出来ないだろう。成る程女人は、虚空にかゝる虹のような、仮の幻であるかも知れない。しかしわれ/\のような愚かな凡夫が、虹をまぼろしと悟るのには、有り難い説教を聴くよりも、いっそ雲の中へ這入って見た方が、容易に合点が行くものだ。それ故まろは、出家をする前に一遍そっと山を下って、女人と云うものを見て来ようと決心した。そうしたらきっと幻の意味が分って、立ちどころに妄想が消え失せるに違いない。」

「そんな事をして、上人に叱られはしないだろうか。」

迷いの雲を打ち拂う為めに、女人の正体を究めに行くと云う千手の決心は、いかにもいじらしい。けれども瑠璃光には、たった一人の友を恐ろしい浮世へ放してやるのが、心もとなく感ぜられた。琵琶の湖の龍神だの、三上山の蜈蚣だのが、出て来たらどうする気だろうか。女人に手足を縛られて、真暗な穴ぐらへ曳き込まれはしないだろうか。萬一生きて帰って来ても、「わしが許すまで山を下りてはなりませぬ。