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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
そうすればそなたは、自分で浮世を見るまでもなく、幻の意味が分るようになるのだ。だから大人しく待って居るがよい。もし上人がお尋ねになったら、山路に蹈み迷って、まろの姿を見うしなったと云って置いてくれ。」
それでも千手は、名残惜しそうに瑠璃光の傍へ寄って、長い間頬擦りをした。物心がついてから一度も離れた例のない友と山とに、ちょいとでも別れるのが辛いようでもあり勇ましいようでもあった。彼の感情は、始めて戦場へ出る士卒の興奮によく似て居た。実際死ぬかも知れないと云う懸念と、功を立てゝ凱旋したらと云う希望とが、小さな胸に渦を巻いた。
二日立っても三日立っても、千手は帰って来なかった。谷へでも落ちて死んだのではあるまいかと、同宿の人々が八方へ手分けをして、山中を残らず捜し廻っても、彼の姿は見えなかった。
「上人さま、わたくしは悪い事をいたしました。先日わたくしは上人さまへうそを申したのでございます。」
こう云って、瑠璃光丸が上人の前に手をつかえて、生れて始めて不妄語戒を犯した事を懺悔したのは、千手が居なくなってから、十日程過ぎた後であった。
「横川から帰る道すがら、千手どのを見失ったと申したのは※(「言+墟のつくり」