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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスV――少年の王国(こぞうのゆめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 71,989 字 · 144 頁
こうしてめい/\に財産が出来ると、生徒たちは盛んに其の札を使用して、各自の所有品を売り買いし始めた。沼倉の如きは財産の富有なのに任せて、自分の欲しいと思う物を、遠慮なく部下から買い取った。そのうちでもいろ/\と贅沢な玩具を持って居る子供たちは、度々大統領の徴発に会って、いや/\ながら其れを手放さなければならなかった。S水力電気会社の社長の息子の中村は、大正琴を二十萬圓で沼倉に売った。有田のお坊ちゃんは、此の間東京へ行った時に父親から買って貰った空気銃を、五十萬圓で売れと云われて、拠ん所なく譲ってしまった。最初は其れが学校の運動場などでポツリポツリとはやって居たのだが、果ては大袈裟になって来て、毎日授業が済むと、公園の原っぱの上や、郊外の叢の中や、T町の有田の家などへ、多勢寄り集って市を開くようになった。やがて沼倉は一つの法律を設けて、両親から小遣い銭を貰った者は、総べて其の金を物品に換えて市場へ運ばなければいけないと云う命令を発した。そうして已むを得ない日用品を買う外には、大統領の発行にかゝる紙幣以外の金銭を、絶対に使用させない事に極めた。こうなると自然、家庭の豊かな子供たちはいつも売り方に廻ったが、買い取った者は再びその物品を転売するので、次第に沼倉共和国の人民の富は、平均されて行った。