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てりはきょうげん
照葉狂言
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《照葉狂言(てりはきょうげん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,730 字 · 100 頁
先なるは紫の包を持ちて手に捧げつ。左右に二人引添いたる、真中に丈たかきは、あれ誰やらむ、と見やりしわれを、左なる女木戸を入りざま、偶と目を注ぎて、
「おや、お師匠様。」
また一人、
「あの、このお子ですよ。」と低声に言いたり。聞棄てながら一歩を移せし舞の師匠は振返りつ。冴かなる眼にキトわれを見しが、互に肩を擦合せて小走りに入るよとせしに、つかつかと引返して、冷たき衣の袖もてわが頸を抱くや否や、アと叫ぶ頬をしたたかに吸いぬ。
ややありてわれ眼をりたり。三人は早や木戸を入りて見えざりき。あまり不意なれば、茫然として立ったるに、ふと思い出でしは野衾の事なりき。俄に恐しくなりて踵を返す。通の角に、われを見て笑いながら彳みたるは、その頃わが家に抱えられたる染という女なり。
走り行きて胸に縋りぬ。
「恐かったよ、染ちゃん恐かったよ。」
「そう、恐かったの、貢さんはあれが恐いのかい。」
「見ていたの。」
「ああ見ていたとも、私が禁厭をしてあげたから何とも無かったんですわ。危ないことね。」
「恐かったよ。染ちゃん、顔をね、包んでしまったから呼吸が出なかったの。そうして酷いの、あの頬ぺたを吸ったんだ。