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てりはきょうげん
照葉狂言
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《照葉狂言(てりはきょうげん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,730 字 · 100 頁
二
これをひさぐもの、皆女にて、市よりおよそ六七里隔たりたる山中の村よりこの橋の上に出で来るなり。夜更けては帰るに路のほど覚束なしとて、商して露店しまえば、そのまま寝て、夜明けてのち里に帰るとか。紫の紐結びつつ、一様に真白き脚絆穿きたるが、足を縮め、筵もて胸を蔽い、欄干に枕して、縦横に寝まりたる乙女等五七人、それなるべし。尽く顔に蓋して、露を厭える笠のなかより、紅の笠の紐、二条しなやかに、肩より橋の上にまがりて垂れたり。
小親も寝たらむ、とここにて思いき。
二
われは一足立戻りぬ。あれという声、呀と叫びたまいし声、いかでそのままに差置きて、小親と楽しく眠らるべき。
いま少し、いま少し、仮小屋と広岡の家と楓の樹と、三ツともにある処に、いま少し、少しにても遠く隔りたらば、心の悩ましさ忘られむ。
渡り越せば、仮小屋とハヤ川一ツ隔たりたり。麓路は堤防とならびて、小家四五軒、蒼白きこの夜の色に、氷のなかに凍てたるが、透せば見ゆるにさも似たり。月は峰の松の後になりぬ。
坂道にのぼりかけつ。頂にいたりて超然として一眸のもとに瞰下さば、わが心高きに居て、ものよく決むるを得べしと思いて、峰にのぼらむとしたるなり。