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てりはきょうげん

照葉狂言

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《照葉狂言(てりはきょうげん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,730 字 · 100 頁

青空文庫

四

「ちょいと、火鉢をね。」

「おい。」とこちら向く。その土間なる客の中に、国麿の交りしをわれ見たり。顔を見合せ、そ知らぬ顔して、仙冠者は舞台の方に眼を転じぬ。牛若に扮したるは小親にこそ。

四

髪のいと黒くて艶かなるを、元結かけて背に長く結びて懸けつ。大口の腰に垂れて、舞う時靡いて見ゆる、また無き風情なり。狩衣の袖もゆらめいたり。長範をば討って棄て、血刀提げて吻と呼吸つく状する、額には振分たる後毛の先端少し懸れり。眉凜々しく眼の鮮なる、水の流るるごときを、まじろぎもせで、正面に向いたる、天晴快き見得なるかな。

囃子の音止み寂然となりぬ。粛然として身を返して、三の松を過ぎると見えし、くるりと捲いたる揚幕に吸わるるごとく舞込みたり、

「お茶はよろし、お菓子はよしかな、お茶はよろし。」

と幕間を売歩行く、売子の数の多き中に、物語の銀六とて痴けたる親仁交りたり。茶の運びもし、火鉢も持て来、下足の手伝もする事あり。おりおり、小幾、しのぶ、小稲が演ずる、狂言の中に立交りて、ともすれば屹となりて居直りて足を構え、手拍子打ち、扇を揚げて、演劇の物語の真似するがいと巧なれば、皆おかしがりて、さは渾名して囃せるなり。