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てりはきょうげん
照葉狂言
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《照葉狂言(てりはきょうげん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,730 字 · 100 頁
身を起して、坂また少しく攀じ、石段三十五階にして、かの峰の松のある処、日暮の丘の上にぞ到れる。
松には注連縄張りたり。香を焚く箱置きて、地の上に円き筵敷きつ。傍に堂のふりたるあり。廻廊の右左稲かけて低く垣結いたる、月は今その裏になりぬ。
謡は風そよぐ松の梢に聞ゆ、とすれど、人の在るべき処にあらず。また谷一ツ彼方に謡うが、この山の端に反響する、それかとも思われつ。試みにソト堂の前に行きて――われうかがいたり。
伸びあがりて密にすかしたれば、本堂の傍に畳少し敷いたるあり。おなじ麻の上下着けて、扇子控えたるが四五人居ならびつ。ここにて謡えるなりき。釜かけたる湯の煙むらむらとたなびく前に、尼君一人薄茶の手前したまいぬ。謡の道修するには、かかることもするものなり。覚えあれば、跫音立ててこの静さ損なわじと、忍びて退きぬ。
山の端に歩み出でつ。
と見れば明星、松の枝長くさす、北の天にきらめきて、またたき、またたき、またたきたる後、拭うて取るよう白くなりて、しらじらと立つ霧のなかより、麓の川見え、森の影見え、やがてわが小路ぞ見えたる。襟を正して曰く、聞け、彼処にある者。