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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

門衛の知らせを聞いて、

「なに、江漢老人が来たと?」

意外そうに、顔を見あわせて、どうしたものであろうというように、三名は、ちょっと、当惑に曇った眼をして、黙りこんだ。

「さては、郁次郎が召捕られたと聞いて、最後の別れを告げに来たものと見えまする」

と、東儀与力はそう言って――

「お奉行、会わせては事面倒ですぞ。ていよく、追い払った方が、上策ではござるまいか」

「いや」

と、冠を振ったのは、羅門塔十郎であった。

「江漢先生といえば、ほかならぬ人物です。隠退はしても、この南町奉行所にとっては、過去の功労者、そうはなりますまい。武士の情けとしても、この際は、是非、会わせてやるのが当然でしょう」

「いかにも、言われるとおりだ。番士、老人を表書院へ通しておけ」

主計頭はそう言って、なお、何か打合せをすました上、ふたりを連れて、書院へ出た。

江漢老人は、肩の骨を尖らせて、そこに坐っていた。顔は、石の如く硬ばって、眼は、爛々と燃え上がッている。

その、ただならぬ気色に、三人は、はっとした。

「老人、珍しいのう」

主計頭が言うと、江漢は、その真っ四角に坐った膝を、きっと、向け直して、