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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁
「何なりと、お訊き下さいませ」
「郁次郎は、長崎表に遊学中、何か、若気の過ちで、わしに言えぬ秘密を抱いて江戸へ帰って来たのではないか。……それを、五百之進殿とそなただけには、打ち明けたものと考えるが、どうだな」
花世の顔は、紙のように白くなった。ほつれ毛が、顫いた。
「い、いいえ……」
「それ、それ、それがいけない。郁次郎を、未来の良人と思って、庇ってくれるのは、うれしい人情だが、早い話が、わしに苦労をかけまいとして、すべてを、秘密にしていたために、こんな大事が湧き上がったのじゃ。間違いはそこからだ。禍根は、毛ほどな食い違いから起る。こうなった以上、何事も、包み隠しは、厳禁じゃ。話してくれい。渡してくれい。――鍵を。ことばを」
詰問るようでも、老先生のことばの底には、よい舅父らしい、優しさ、温かさが、あふれている。
花世は、その優しいことばに、かえって、激しい感情を揺たぶられたように、わっと、老先生の膝に泣きすがった。
「す! すみません! ……お舅父様! もう何もかも申しあげてしまいます。ですけれど、今は、心が取りみだれて、何からお話してよいやら分りませぬ。