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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

「したが、大事なご対面です。今夜というのも、余りにご性急、わけて、本人は寝耳に水でもござりましょうゆえ」

「いや、苦しゅうない。羅門、孫へ手紙を書け」

龍山公はもう有頂天な喜びかたである。何でもすぐに、ここへ迎えようと言う。

羅門もやむなく、玉枝へ宛てて、手紙を書いた。

小笠原の家臣は、華麗な鋲乗物を支度して、月下を燦々と、龍山公のお孫を迎えるべく蔵前片町へ出向いて行った。

月はいよいよ冴え、月はいよいよ天に高い。

一点の雲もない仲秋。

宴は別間にひらかれた。そして、龍山公のお孫の着くのを、名月の席に待つのであった。鼓は鳴る、笛は鳴る、酔はめぐる。――ただ羅門塔十郎だけは酔えなかった。余りに厳粛な龍山公の前では、窮屈に坐ったきり、膝を崩すこともゆるされない。

迎えの駕は、なかなか帰らない。

「まだか」

と、龍山公は、幾たびも、近侍に訊ねた。

二更は過ぎた、やがて、三更――

羅門はそろそろ、明け方が気がかりになって来た。郁次郎の処刑――そのことである。

塙江漢は、果たして、今夜のうちに、郁次郎を救うべき確証と罪人を挙げて、奉行所の門を叩いたろうか。

東儀は、立会いの自分が戻らぬため、さだめし、気を焦っているだろう。