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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《牢獄の花嫁(ろうごくのはなよめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 頁

青空文庫

「鴨? ……して一体貴様何者なのか?」

「こうなっちゃ、何もかも、神妙に申し上げます。あっしゃ、何を隠しましょう、中国筋からこの江戸表まで、あの侍の懐を狙って付いて来た、道中稼ぎの掏児で、別府の新七というもんです」

「じゃ掏児か」

「へい、これでも、中国筋では、少しは知られているチボでございます。花の江戸へ出て、お縄を戴いたなあ、かえって、本望でございます」

二人は、唖然として、顔を見あわせてしまった。二の句がつげなかった。

最初は、その自白も疑ってみたが、彼の掏児であることは、いくらでも証拠だてられた。また、筋違御門で編笠の侍から掏り盗ったという紙入れまで、そこへ、吐いて見せた。

「貴公たち、また、最前の怪物を逃がしたそうではないか」

そこへ、東儀与力が、不きげんな色を眉に漲らしてはいって来た。それに尾いて――

「何と言っても、きょうは場所が悪かった。まあ、そう咎めてもしかたがないでしょう」

と、取做して言った声は、羅門塔十郎であった。

そして二人は、狭い、薄暗い、自身番小屋の隅に腰をかけた。

ちらと、二同心の仮吟味をしている様子へ横目をくれて、

「肝腎なシテを逃がして、そんなワキ師を捕えてみたところで大したことはあるまいが」