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げんだいてつがくこうわ

現代哲学講話

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《現代哲学講話(げんだいてつがくこうわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,337 字 · 522 頁

青空文庫

危機と見えたものも、それが危機として爆発しない内に、新しい秩序にまで、自然的に編制替えされて了ったとも云うことが出来る。実際特に近世の諸自然科学に於ては、一つの体系が破産をしたということを聞かない、自然科学の財産は破産に先立っていつも整理が付いて来たと云っても好い。そういう意味で自然科学には本来危機などはなかったとも考えられる。

処がそれにも拘らず、現在の吾々の眼の前には、現に自然科学の一つの危機が横たわっているように見える。実際人々は之を危機と呼んでいる。物理学は一九二四年以来、極めて急速な進歩と之に従う動揺と困難とに出会ったと云われる*。物質の概念はもはや物質の概念でなくなり、因果律は物理的世界を支配する安全な法則ではなくなった、と云われる。危機というものからは縁遠い筈であった自然科学――物理学――が、かくて今日危機に臨んでいると考えられる。だが一体なぜそれは危機なのか、なぜ人々は夫を危機と呼ばねばならないのか。なぜそれが単純に理論の急変や急角度の発展として済まされずに、特に危機として意識されねばならないのか。危機という言葉は、社会生活や之に直接関係しているイデオロギーからの類推・譬喩ででもあるのか。