輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
がらすどのうち
硝子戸の中
線上閱讀夏目 漱石《硝子戸の中(がらすどのうち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,702 字 · 105 頁
散歩などに出かける時、私はよく交番の傍に日向ぼっこをしている彼を見る事があった。それでも宅にさえいれば、よくうさん臭いものに吠えついて見せた。そのうちで最も猛烈に彼の攻撃を受けたのは、本所辺から来る十歳ばかりになる角兵衛獅子の子であった。この子はいつでも「今日は御祝い」と云って入って来る。そうして家の者から、麺麭の皮と一銭銅貨を貰わないうちは帰らない事に一人できめていた。だからヘクトーがいくら吠えても逃げ出さなかった。かえってヘクトーの方が、吠えながら尻尾を股の間に挟んで物置の方へ退却するのが例になっていた。要するにヘクトーは弱虫であった。そうして操行からいうと、ほとんど野良犬と択ぶところのないほどに堕落していた。それでも彼らに共通な人懐っこい愛情はいつまでも失わずにいた。時々顔を見合せると、彼は必ず尾を掉って私に飛びついて来た。あるいは彼の背を遠慮なく私の身体に擦りつけた。私は彼の泥足のために、衣服や外套を汚した事が何度あるか分らない。
去年の夏から秋へかけて病気をした私は、一カ月ばかりの間ついにヘクトーに会う機会を得ずに過ぎた。病がようやく怠って、床の外へ出られるようになってから、私は始めて茶の間の縁に立って彼の姿を宵闇の裡に認めた。