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がらすどのうち

硝子戸の中

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《硝子戸の中(がらすどのうち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,702 字 · 105 頁

青空文庫

二十八

もっと先方の主張を取り入れて、周到な解釈を下してやる余地はいくらでもあったのである。

しかしその時座にいた一人が、突然私の議論を引き受けて相手に向い出したので、私も面倒だからついそのままにしておいた。けれども私の代りになったその男というのはだいぶ酔っていた。それで芸術がどうだの、文芸がどうだのと、しきりに弁ずるけれども、あまり要領を得た事は云わなかった。言葉遣いさえ少しへべれけであった。初めのうちは面白がって笑っていた人達も、ついには黙ってしまった。

「じゃ絶交しよう」などと酔った男がしまいに云い出した。私は「絶交するなら外でやってくれ、ここでは迷惑だから」と注意した。

「じゃ外へ出て絶交しようか」と酔った男が相手に相談を持ちかけたが、相手が動かないので、とうとうそれぎりになってしまった。

これは今年の元日の出来事である。酔った男はそれからちょいちょい来るが、その時の喧嘩については一口も云わない。

二十八

ある人が私の家の猫を見て、「これは何代目の猫ですか」と訊いた時、私は何気なく「二代目です」と答えたが、あとで考えると、二代目はもう通り越して、その実三代目になっていた。