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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

線上閱讀蘭 郁二郎《秘境の日輪旗(ひきょうのにちりんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 頁

青空文庫

お勤めも不首尾になって、主家を浪人され、ひどく貧乏したらしいね」

「でも、よく、それが残っていましたね」

「うむ、例の小箱と、先生の研究だけは、代々園部家に伝わっていたのだ」

謙一は、トランクの中から、それを取り出して来た。

「これだ」

謙一の話とはちがって、真っ黒に煤けた、色どりなどもはげ落ちた木箱で、羊のなめし革も灰色にかわり、ところどころに虫くいが出来ていた。

そのほかに、もう一冊、これも煤けた、虫くいだらけの和綴の本が箱に入っていた。

「これが先生の残された記録だ、ボルネオ探険の鍵が、この中に書かれてあるのだ」

「えっ! この古本の中に!」

「どうして、この本が兄さんの手に入ったか、それも一と通り話そう……」

謙一がこの古文書を見つけだしたのは、祥子の家が、田舎へ引きあげる時だった。祥子の母――園部夫人が、安い値で、売り払おうとしたのを、その当時少尉に任官したばかりの謙一が譲ってもらったのだ。

「僕、ちっとも知りませんでしたよ」

「そりゃあそうだ、家においてなかったんだから……」

いくら語学の天才でも、古文は読めなかった。で、その方の学者の手許で翻訳してもらった。