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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

「おマンさんが、また、奇妙なこといいだして、……」

ババンは、あきれた顔つきである。

「どんな女チボか知らんけんど」

と、マンは、夢みるような、妖しげな眸になって、ひとりごとのように、「いっぺん逢うてみたいなあ。逢うて、お礼がいいたいわ」

「泥棒に、なんのお礼をいうのかな?」

ババンは、いよいよ、あきれ顔だ。

「いろいろ」

ためいきのように、その言葉を落した。それから、煙管を取って、静かに、煙草を吸った。

表で、深夜の空気を破って、ブーン、というモーターの音が起った。つづいて、ペタペタというベルトの音。水の音。

「ありゃ、もう豆腐屋が起きて、仕事を始めちょる。さあ、寝よ、寝よ」

ババンのその言葉で、みんな、立った。

金五郎は、ババンと息子とが去った後で、漁に行って、勝則に、光丸とのことについて話をしたことを、マンに報告するつもりであったけれども、思いとどまった。マンの雲行が怪しい。

ただごとでない。不思議なことばかりいう。

(風呂に入っている間に、お京の手紙を見たのじゃあるまいか?)

その疑いの心が、湧いた。

それぞれ、寝室に引き取った。

金五郎は、日記をつけた。