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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《花と龍(はなとりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 頁

青空文庫

花やかではなかったけれども、男らしい生涯であったと思う。しかも、自己反省を絶えずおこない、ときに、自己嫌悪にすら陥っていた。

私はそういう誠実な父の人間性を見失うまいと心がけ、親分と称されていた父を、ヤクザ世界のボスか英雄のようには書きたくなかった。任侠とか、仁義とか、男伊達とかいうものとはちがっていたからである。しかし、父はたしかに太ッ腹で、豪胆だった。といって、けっして荒っぽい所業はなく、むしろ、温雅といった方がよかった。おまけに、神経のこまやかなところがあり、涙もろく、私たち子供たちに対しては、やさしく慈愛深かった。父は無学ではあったが、機智に富み、小さい私たちに、よくデタラメなお伽ばなしを聞かせた。お化けの話も得意だった。

いま考えると、天性のストリー・テラーであったようで、ひょっとしたら、詩やロマンを愛する私の資質も、父から受け継がれたのではないかと思うときがある。絵も好きで、自分で武者絵を描き、タタミ二枚ほどもある大凧を作ってくれたこともある。物干につながれ、天高くあげられて風に唸っていたのが、まだ瞼と耳とに残っている。一度、糸が切れて、一里も先に落ちたが、私の名が書いてあったので、拾った人が届けてくれた。