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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁

青空文庫

私は生れつき皮膚が弱く、蚊や蚤に食われると、大きく腫れた。私が「かゆい、かゆい。」と悲鳴をあげると、母は夜中でも掻いてくれた。母はまた蚤を捕えると、その箱枕の上でぴしっと音をさせて殺した。ここには母の鏡台が置いてあった。昔風の小さな代物であった。母の髪を結いにくる人はお定さんという、もういい年の人であった。その日には、先に梳手が二人ばかり来て、後からいい時分にお師匠さんが廻って来た。私は母が髪を結うとき、家に居合わせば、いつもそばにいて見た。梳手の一人は私の学校友達の姉さんであった。お定さんもまた沢村伝次郎の、それから伊井蓉峰の贔屓であった。髪を結いながら、そんな話ばかりしていた。伊井の背がもう何寸か高ければ申分ないのだがというようなことを云っていた。お定さんは話しながらも、その手は瞬時も休むことなく働いていた。母は殆ど丸髷にばかり結っていた。

蔵の戸は網戸で、錠前が下りるようになっていた。中には箪笥や長持や葛籠の類があった。また祖父が集めた書画骨董の類があった。戸口のわきに二階に通ずる階段があった。二階は父の稽古場であった。この階段から、大阪お祖母さんは二度落ちて、そのつど虫の息になった。