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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁

青空文庫

一度は回復したが、二度目にはそのまま寝込んでしまった。私はよく階段の中途に腰かけて、二階の稽古を聞いたりした。私はいつともなく、「酒屋」や「堀川」のさわりを聞き覚えた。二階は畳敷は四畳半で、床の間には父の師匠の摂津大掾の写真が飾ってあった。小松宮から拝領した素袍に烏帽子をつけた姿の写真であった。正月には、この床の間には父の弟子達から贈られた供餅が飾られた。父は盲目であったから、自分では見ることは出来なかったが、沢山の稽古本があった。父はいつもこの部屋にひとりとじ籠っていた。部屋の窓から外を見ると、浅草公園の十二階や上野の山が見えた。窓の際には、丈高い公孫樹があって、手を伸ばせば、その葉や枝に触れることが出来た。ほかに藤の樹もあって、枝を生垣の外にのばし、かなり大きな藤棚を成していた。花どきには、見事な房を垂れた。関東大震災のときに、この家は焼けた。焼跡に行ったら、玄関の敲土にあった傘桶と、池の縁の鋳物の蟹と亀だけが、そのまま残っていた。私はその蟹と亀とを、そのとき避難した向島の親戚の家に持って行って、そこの池の縁に置いた。