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おちぼひろい

落穂拾い・犬の生活

小山 清

線上閱讀小山 清《落穂拾い・犬の生活(おちぼひろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,741 字 · 486 頁

青空文庫

」

「麻布の狸穴まで行かなくちゃならない。」

「それはまた遠方へ。」

翌日祖父は朝飯をすますとすぐ俥に乗って「遠方」へ出かけた。この山の手をひどく遠く感ずる習性は、その頃の下町育ちの者でないとわからないのではないだろうか。五十にて四谷を見たり花の春。まさかそれほどではないにしても、出不精の祖父にしてはめずらしいことであった。昼すぎになって祖父は自分のほかにもう一台俥を連ねて帰ってきた。

私はちょうどそのときは六年生になる学年末の休みに当っていた。その日戸外で紙芝居を見て家に帰ると、縁側に茣蓙を敷いて、母となかやともう一人島田髷の若い女の人が、神棚や仏壇の真鍮製の器具を磨きずなでみがいていた。子供というものは、戸外の遊びからわが家に帰ってくるときは、誰もが息をはずませて駈け込んでくるものである。私が知らない人がいたので間の悪い顔をしていると、母よりも早くその人が笑顔を見せて、

「お帰りなさい。」と云った。私が返事が出来ずにもじもじしていると、重ねて、「どちらへ行ってらしたの? 頬っぺたを真赤にして。」

母がかえりみて、

「また桜林ではじめさんと樹登りをしていたんだろ。