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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《蔦葛木曽棧(つたかずらきそのかけはし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 頁

青空文庫

そこで私はその前を大手を振って通って来たが、見れば、額に太刀傷のある、大きな男が一人いた」

「それではもしやその中に、白髯を生やした武士が混っておりはしませんでしたか?」

「白髯の武士はいなかった。もしその武士がそこにいたら……」

「え」と鳰鳥は訊き返した。

「決して助けはしなかったろう」

「それはまた何故でござります?」

「何故と訊くのか? さあ何故だろう?」

若衆はいかにも意味ありげの微妙な微笑を浮かべたが、そのまま深く沈黙した。

夜風が庭を通うと見えて、木の葉の片寄る忍び音が、カサコソと幽かに聞こえて来た。

鳰鳥には若衆の人柄が、呑み込めないような気持ちがした。

「それにしても、姿の優しいにも似ず、何という強い人であろう。刀も抜かずにそれほどの敵を、金縛りにしてしまうとは」

若衆を思う彼女の恋は、今夜の働きを知ると共に、益※(二の字点、1-2-22)強くなるのであった。

「ほんとにこういう人にこそ、誠の心を打ち明けて、自分の素姓も物語り、復讐の手曳きをして貰いたい」そうは思っても、若いに似合わずその物堅さに気遅れして、云い出すことは出来なかった。

秋の夜長をこうして二人は、やがて双六だの投げ扇だの、花合わせだのをして興じ合った。