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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《蔦葛木曽棧(つたかずらきそのかけはし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 頁

青空文庫

やがてまたもや山と谷はあたかも何事もなかったかのように、凄じいまでに静まった。

五右衛門は二人を返り見たが、

「これで戦いは五分五分でござる」そうしてホッと吐息をして、

「さすがは花村甚五衛門じゃ。立派な陣立てを致しておるわい」

しかし武兵衛にも数馬にも五右衛門の言葉が呑み込めなかった。そこで数馬は不思議そうに、

「その花村殿のご軍勢はどこに屯ろしておられますな?」

「眼下の谷に満ち満ちてござる」

「して、冠者方のご軍勢は?」

「四方の山々に控えてい申す」

「姿の見えぬその訳は?」

「奇道の対陣でござるからじゃ」

「フーム」と数馬は黙り込んだ。

五右衛門は得意気に笑ったが、

「つまり云って見れば術比べでござるよ。敵も味方も正法を避けて、雪遁の奇道を互いに用い、互いに攻め合っているのでござる……たとえば眼下の谷の中の、灌木や岩は皆軍兵。日昼に諸君が見られたところの、無数の動物も軍兵でござる。物に拠って形を変え、天然を利して攻撃を避ける。孫呉の兵法にもあった筈。さすれば奇道と申しても、その実やはり正兵法じゃ」

「戦い、五分五分と仰せられたは?」

「日中は我らの敗けでござった。