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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋・恩讐の彼方に
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《藤十郎の恋・恩讐の彼方に(とうじゅうろうのこい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,146 字 · 74 頁
籤引なんか、俺あ真っ平だ。こんな時に一番物を云うのは、腕っ節だ。おい親分! くだらねえ遠慮なんかしねえで、一言、嘉助ついて来いと、云っておくんなせい」
四斗樽を両手に提げながら、足駄を穿いて歩くと云う嘉助は一行中で第一の大力だった。忠次が心の裡で選んでいる三人の中の一人だった。
「嘉助の野郎、何を大きな事を云ってやがるんだい。腕っ節ばかりで、世間は渡られねえぞ。ましてこれから、知らねえ土地を遍歴って、上州の国定忠次で御座いと云って歩くには、駈引万端の軍師がついていねえ事には、どうにもならねえのだ。幾ら手前が、大力だからと云って、ドジ許り踏んでいちゃ、旅先で、飯にはならねえぞ」
そう云ったのは、松井田の喜蔵と云う、分別盛りの四十男だった。忠次も喜蔵の才覚と、分別とは認めていた。彼は、心の裡で喜蔵も三人の中に加えていた。
「親分、俺あお供は出来ねえかねえ。俺あ腕節は強くはねえ。又、喜蔵の様に軍師じゃねえ。が、お前さんの為には、一命を捨ててもいいと、心の内で、とっくに覚悟を極めているんだ」
闇雲の忍松が、其処まで云いかけると、乾児達は、周囲から口々に罵った。