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おどるびじんぞう
踊る美人像
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《踊る美人像(おどるびじんぞう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,460 字 · 31 頁
鍵穴からもぐる人
――悪い人は遠慮なく撃っておくれ――と言い乍ら、短銃を美人像の手に持たせ、引寄せるように頬摺りをしていた、昨夜の糸子の嬌態を思い浮べて、千種十次郎はすっかり憂鬱になってしまいました。
「千種さん電話」
気が付くと助手が受話器を持って此方を見詰めて居ります。
「何誰? あ、勇か、どうした。何? 嫌疑者が挙げられた、誰だ? 何、石郷氏? 何うして殺したんだ、何、其処までは解らない。呆れたなア、よしよし、それだけでも夕刊へ入れて置こう。後引続きやってくれ、朝刊へは事によったら昨夜の事件もぶちまけよう。あれは良い特種になるよ、糸子が死んだんだから、構わないだろうよ。左様なら、確り頼んだよ――」
鍵穴からもぐる人
「柳糸子の怪死事件」は全くセンセイションそのものでした。新聞は毎日煮えくり返るように書き立てましたが、犯人はどうしても挙らないばかりでなく、事件の真相も、絶対にわかりません。
石郷氏は身分の関係で、任意同行の形式で取調べられましたが、間もなく釈放されてしまいました。女優と最後に争ったのは事実ですが、それは前の情人から贈られたという美人像に糸子が不思議な愛着を持って居る様子を見せつけられて、妙に嫉妬を感じたというに過ぎなかったのです。