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しぜんかいのきょぎ

進化と人生(下)

丘 浅次郎

線上閱讀丘 浅次郎《進化と人生(下)(しぜんかいのきょぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,568 字 · 109 頁

青空文庫

では信ぜぬという態度が必要である。今日までの人間の知識の歴史が、誤っては改め、誤っては改めることの連続であるのを思えば、何ごとでも軽々しく確信するのは大いに考えものであるが、特に先から先へと物の理屈を考えてゆく哲学においては、どこに一つのまちがいがはいりこんでも、それから先が全部だめになるところがあるゆえ、議論の一段ごとに、厳重な用心をせねばならぬ。

人のいうたこと、書物に書いてあることをそのままに信ぜぬのみならず、自分で直接に見たと思うこと、さわったと思うことでも一応は確かめてみる必要がある。生理学の書物を開いて見れば、錯覚や幻覚の例がいくらも出ているが、特別の注意を怠ると、そのためずいぶん誤ったことをそのまま信ずるにいたらぬとも限らぬ。並行線でもこれに若干の斜線を画き加えると不並行線に見え、一個の豌豆でもこれを中指を人差し指の上に折り重ねてなでると確かに二つあるごとくに感ずる。ただしこれは物差しで測るとか目で見るとか、手の掌でふれるとかすれば、線の並行せること、豌豆の一つよりないことが容易に知れるゆえ、錯覚のままに誤り信ずるにはいたらぬ。また同じ大きさのゴム球でも、短い棒の先でなでれば大きく感じ、長い棒の先でなでれば小さく感ずるが、目を開いて見ればただちにその誤りを訂正することができる。