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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

どうかすると二日も三日も空腹を抱えて、往来の人の袖や袂にも縋らなければならなかったのでございます。

――こんな事を申上げるのは、本当に恥かしい事で、身を切られるように辛いことには違いありませんが、近ごろの私の身に起った、不思議なことを解って頂くためには、やはり皆んなお話した上で、親分の知恵を拝借するほかはございません。

――今から二年前、私が十八の年の春でございました。大店の番頭さんらしい人が、両国の橋の下にいる文吉と名差しで訪ねて来て――申し忘れましたが、私の元の名は文吉でございました――その番頭さんは、私を人のいないところへ連れて行って、いきなり――お前は元南左衛門の軽業小屋にいた文吉に相違ないだろうな――と申します。私がそのとおりだ、怪しいと思うなら、誰にでも訊いてくれ――と申しますと、それでよかった、実はお前の本当の身の上がわかったのだ。誠の親にも引合せ、大家の若旦那の身分に直してやる。一緒に来い――とこう夢のようなことを申すのでございます。

――あまりの事にびっくりして、そんな馬鹿な事があるものか――と申しますと、いや馬鹿か馬鹿でないか、乗込んでみればわかることだ。