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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

どこへ突出されたって、今より悪くなりっこはあるまいから、黙って一緒に来るがいい、とも申しました。

――後でいろいろ訊いてみると、私は四谷忍町の小松屋の一人息子で、重三郎というのだそうですが、小さいとき悪者に誘拐されて軽業小屋に売られたものらしく、今まで行方がわからなかったが、フトした事から、南左衛門の一座にいた文吉というのが、その重三郎に違いないと、わかったということでございます。もっとも小松屋はその後甥の吉太郎というのを養って、跡取ということにしておりましたが、この吉太郎が道楽を覚え、さんざん放埒の限りを尽した揚句、勘当されて相州厚木へやられているとも申しました。

それはともかくとして、番頭さんは私をつれて、すぐ四谷忍町の小松屋へ乗込むのかと思いましたが、そうではなくて、いきなり草鞋を履いて、小田原へ参りました。そこには、かねて番頭の知合の家があって、小さい旅籠屋をしていたのでございます。

――私はその旅籠屋に預けられて、一年のあいだ若旦那らしくなるように修業させられました。第一が言葉から、立居振舞、読み書き、着物の着よう――何より大事なことは、二三年の野天暮しで私の身体や顔が、すっかり陽焦けがして、乞食臭くなっているので、それを世間並の人間らしく戻すには、どうしても一年はかかったのでございます。