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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(九) 全十冊

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(九) 全十冊(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,029 字 · 82 頁

青空文庫

「あ、あの野郎」

「気をつけろ、刃物を持っているから」

「なんの」

八五郎は疾風の如く飛んで行くと、畑を突っきって逃げて行く男の後ろから、無手と組みつきました。

平次が駈けつけるまでもなく、争いは簡単に埒があきました。八五郎に繩を打たれて引っ立てられたのは、憤怒と絶望に歪む、富坂松次郎の顔だったのです。

*

下手人の松次郎は、浪人と言っても武士の子だったので、いちおう厄介な手続きを済ませ、平次と八五郎が神田に引揚げたのは、もう夜でした。

「どうしてあの松次郎が下手人とわかったんです」

八五郎は晩酌につき合いながら、平次の解説をせがみます。

「松次郎は従姉のお妙に夢中だったのさ。折があったら竜吉を殺そうと狙っていたことだろう。殺して置いて、自殺と見せかけようとした。凧糸で首を絞めただけでは、自殺は出来ないが、火箸を突っ込んで捻ると、ずいぶん死ねないこともあるまい。うまい術を考えたものだよ、――もっともそれも丈夫な人間に出来ることで、病身の竜吉には先ずむずかしいと見なければなるまい。それに自分の首へ巻いた凧糸を、火箸で捻るとしても、右利きの竜吉が、首の右側でやったのは変じゃないか。