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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁
武者修行には、やはり武者修行精神がなければならない。克己と求道のやむにやまれないものが、安住を捨てて、進んで艱難につくところに、その純粋な目的があった筈である。
禅門の雲水のように。
また当然な求道精神の昂まる意志の前に。
すでに足利末期の暗黒混濁な世相の底流には、その頽廃期に躍る人間とは正反対に、時流の息ぐるしさや腐敗から離脱して、甦ろうとする新生な思想が、武士の中には芽をふいていた。
それは、武士訓の発生としてあらわれている。武士訓には、一族の主たる者が、その子弟のために書き与えたもの、或は一般の武士社会へ呼びかけたものなど、幾多があるが、その真意には、余りに腐えた現状生活に対しての自省と、憂いと、甦生の精神から出ていることは一つである。
武士訓とは、いうまでもなく武士道徳の誡語である。武士のたしなみ、武士のなすまじきこと、武士の勤むべきことなど、総じてこれから武門の中堅たろうとする若輩に訓えたものである。
その骨子は、鎌倉武士道の復古だった。また、そのうちには、後期の江戸武士道――山鹿素行の「士道」だの、山本常朝の「葉隠」などに研磨されて行った武士道根柢精神も、まだ精錬されない地金のままではあったが、既に当時の武士訓のうちに、ことば書きとなって現われていた。