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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

また、二十一歳から後、晩年熊本へ来て落着くまで、その間の三十何年間というものは、文字どおりな白雲流水の身で、一定の家居も家族も持たず、遊歴から遊歴の修行道に暮している彼であるから、当年の一刀を、晩年まで持っていたとは思われない。もっと強く証拠立てていうならば、武蔵自身もいっていた通り、その遊歴中に、生涯六十幾回の試合をして、生死の中を通って来ているのである。いくら銘刀でも、そうそう無限に実戦に使えるものではない。

こういうふうに文献から漁り出せば、武蔵の所持した刀はまだ幾つか挙げることができよう。しかし、いずれが武蔵の最も鍾愛した物か、下り松の試合の折にはどの刀を使用したか、巌流島では何を差していたかなどという問題になると、これはまったくわからない考証になる。

けれど、以上挙げた数点だけでも、おぼろながら彼の愛好の趣は察しることができよう。凡作は佩かなかった。また、古刀を好んだ。それかといって特に刀に奇を衒ったふうもないし、慶長ばやりの胴田貫だとか厚重だとかいう、いわゆる強刀や大業刀らしい物を用いなかったことがわかる。

柳生流の哲理の窮極は、無刀という、二字で尽きている。