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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁
茶の道に、或る日の閑雅を愛し、禅の交わりに、心の語らいをする友などあれば、そこには必ず画が語られ、書談が生じ、茶、禅、画といったような一味に浸る機会が多い。また、興を感じてくる場合が多い。自分も一筆画いてみようかなどの創意もそんな折から生れてくるものである。
しかし、この知己の範囲も、武蔵の交友も、熊本に落着いた晩年以後のことは分っているが、五十歳以前の彼が遊歴中の前生涯では、殆ど分っていないのである。彼が蹴鞠もやり、能楽にも通じ、また、その書や画の半面から想像すると、ずいぶん貴顕の門にも出入りしたのではないかと察しられるのであるが、殆ど文字の上において、その証と見るべきものは残っていない。
茶をやったのは、彼の何歳ぐらいからか。おそらくそれも、細川家へ行ってから後とは思われない。その以前小笠原家に足を留めていた折、また、出雲の松平家にあっても、諸家の門で茶の饗応にはしばしば招かれていたにちがいないし、禅家にも、ささやかな民家ですら、茶はさかんに行われていた時代なので、武蔵も壮年から或る程度のたしなみはあった筈に思われる。
茶事の場合は、貴賤の隔てをやかましくいう当時でも、かなり貴顕にも近づき、多趣味な者とも知りあうので、そうした折々の影響は、武蔵の画にも、必然あったものと見てよかろう。