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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 宮本武蔵(ずいひつ みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 141,786 字 · 278 頁

青空文庫

洞窟は、立って自由に出這入りでき、ふところも広く、奥行は数十歩にして尽きるが、岸々たる大岩の袖で囲まれており、なるほど、瞑想するには、ふさわしい場所である。寺記によると、平安朝以前からの開基と、伝えられ、檜垣の媼なる伝説の人が、国守清原元輔の頃、ここに観世音を祠って以来のものといわれている。観音大士のほかに、洞外洞中に、五百羅漢の石像が、乱離と、あちこちに、仆れたり、倚ったりしている。が、これはずっと後代の物で、武蔵の時代には見られなかったものと思う。

それにしても、中は、ほの暗く、しばらく立っていると、岩肌の雫が、滴々と、肩に落ちて来て、骨髄に沁み入るような思いがする。

武蔵は、ここに、坐ったのだろうか。

そして、素むしろか、何かを敷いて、一脚の机と、一穂の寒燈を照し、あの五輪書を、書いたという。

五輪書の序文にある――旧暦十月上旬の頃といえば、もう冬で、洞壁の雫も、滴々の水も、氷のような冷たさであったろう。夜すがら、燭に、頬骨を照らさせて、遅々と、筆を持っている彼の姿を想像すると、思うだけでも、肌に粟が生じてくる。――身を浅く思ひ世を深く思ふ(独行道の語)、たしかに、彼のことばは、彼自身をあざむいていない。