輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁
で、私はついにこんな出来心を書き出してしまった。ごかんべんねがいたい。
太平記を書き、当然、そのころの世態を調べながら、私はいつも、当時のような乱世下の民衆は、いったいどんな悲惨な中に生きたかに、想到せずにいられなかった。
ところが、それにもまけない悲惨な民衆が、こんどの伊勢湾颱風では、目のまえにおかれている。六百年の昔でもない、今日の日本のまン中のことなのだ。どうにも考えざるをえない。
挿絵の杉本健吉さんは、名古屋市瑞穂区に住んでいる。私の原稿は日々健吉さんの手へ送られてゆく。仕事のうえで一つに暮しているようなものだ。杉本家の被害はかろくすんだらしいが、周囲さだめしたいへんだろう。颱風禍いらい、すでに半月にもなるが、読者諸子もすでに知っての通りな有様である。そこへ昨夜手にした健吉さんからの便りにも、
――拙宅は屋根を直そうにも瓦がなく、ビニールを敷き、割れ瓦をのせています。これは全市共通なことで、大別してわれわれ程度は、被害の内には入りません。
とみえ、
かなしい事には、被災者とわれわれ非罹災者との間にさえ、日にまし感情上のヘダタリや差があり、それはあの気のどくな方々と一しょに汚水の中で腹をへらし、ローソクの灯の心細い寒夜を共にしなければ、とうてい、被災者の実感はつかめるものではありません。