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ずいひつ しほんたいへいき

随筆 私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《随筆 私本太平記(ずいひつ しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,947 字 · 114 頁

青空文庫

社会が狂い、人間もちょっと逆上し出すと、いつ何を見るかわからない。この恐さだけは、太平記の時代も今もお互いの中でいささかも減じてはいない。

草木染の山崎斌氏から手紙をもらった。稲村ヶ崎で義貞の龍神献剣のことなどは捨てて、牡丹の凋落に、高時の母の母情や春渓尼を出した条など何度も読み返したといってくれた。

これまで、史上の高時は、大乱の元兇みたいに、その戦犯悪はすべて彼ひとりの“暗君”と悪政の名にかぶせられてきた。明君でなかったことは確かだが、さりとて彼をそうまでにするのは史家の御都合主義であり、可哀そうな間違いだ。凡君も社会の地ゆるみの一因にちがいないが、もっと大なる戦争挑発者はほかにいたのである。むしろ高時は犠牲者といってよい。

「歴史地理」の第四巻(明治三十五年号)に大森金五郎博士の“稲村ヶ崎渡渉記”が三回にわたって載っている。

これはずいぶん参考になった。大森博士は義貞の龍神祈り伝説をくつがえすため、漁師や学生をひきつれて、太平記所載の大潮に当る日を期し、二度も稲村ヶ崎の海中徒渉をこころみているのであった。一文を書くにもそうまでにした学問への熱意には敬服される。