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せいあどうきだん
青蛙堂鬼談
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁
そこから更にまた三里あまり引っ込んだところだというから、今日ではともかくも、そのころでは、かなり辺鄙な土地であったに相違ない。そこに由井吉左衛門という豪家があった。なんでも先祖は菊池の家来であったが、菊池がほろびてからここに隠れて、刀を差しながら田畑を耕していたのだそうだが、理財の道にも長けていた人物とみえて、だんだんに土地を開拓して、ここらでは珍しいほどの大百姓になりすました。そうして子孫連綿として徳川時代までつづいて来たのであるから、土地のものは勿論、代々の領主もその家に対しては特別の待遇をあたえて、苗字帯刀を許される以外に、新年にはかならず登城して領主に御祝儀を申上げることにもなっていた。
そんなわけで、百姓とはいうものの一種の郷士のような形で、主人が外出する時には大小を差し、その屋敷には武具や馬具なども飾ってあるという半士半農の生活を営んでいて、男の雇人ばかりでも三四十人も使って、大きい屋敷のまわりには竹藪をめぐらし、またその外には自然の小川を利用して小さい濠のようなものを作っていた。土地の者がその門前を通るときは、笠をぬぎ、頬かむりを取って、いちいち丁寧に挨拶して行き過ぎるという風で、その近所近辺の村びとには大方ならず尊敬されていた。