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せいあどうきだん

青蛙堂鬼談

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,438 字 · 238 頁

青空文庫

「そこに笛を吹いてござるのか。」

「はい。」と、笛をふく男は低い声で答えた。

「あまりに音色が冴えてきこえるので、それを慕ってここまでまいった。」と、喜兵衛は笑みを含んで言った。

その手にも笛を持っているのを、男の方でも眼早く見て、すこしく心が解けたらしい、彼の詞も打解けてきこえた。

「まことにつたない調べで、お恥かしゅうござります。」

「いや、そうでない。せんこくから聴くところ、なかなか稽古を積んだものと相見える。勝手ながらその笛をみせてくれまいか。」

「わたくし共のもてあそびに吹くものでござります。とてもお前さま方の御覧に入るるようなものではござりませぬ。」

とは言ったが、別に否む気色もなしに、彼はそこらに生えている芒の葉で自分の笛を丁寧に押しぬぐって、うやうやしく喜兵衛のまえに差出した。

その態度が、どうしてただの乞食でない。おそらく武家の浪人が何かの子細で落ちぶれたのであろうと喜兵衛は推量したので、いよいよ行儀よく挨拶した。

「しからば拝見。」

彼はその笛を受取って、月のひかりに透かしてみた。それから一応断った上で、試みにそれを吹いてみると、その音律がなみなみのものでない、世にも稀なる名管であるので、喜兵衛はいよいよ彼を唯者でないと見た。