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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁

青空文庫

安行が吉岡家を訪問して、半日ぐらい話し込んでいることは、従来にも屡々あった。

此頃は日が滅切詰って、午後四時には燈火が要る。麗かな日も、今日は午後から俄に陰って、夕から雨を催した。五時を過ぎても、六時を過ぎても、二人は帰らないので、市郎も少しく不安を感じ初めた。殊に昨夜のの一件もあるので、途中が何だか剣呑にも思われた。家にいて心配するよりも、迎いながら町尽頭まで出て見ようと決心して、市郎は洋杖を振りながら門を出ると、恰も七兵衛の駈けて戻るのに逢った。

「小旦那……。」

彼は呼吸を喘ませていた。暗くて能くは判らぬが、恐く顔の色も蒼くなっているだろうと思われた。

「どうしたんだ。」と、市郎も慌しく駈寄って訊ねた。

「大旦那様は戻ったかね。」

「まだ帰らない。お前は親父と一所じゃアないのか。」

「一所だったが……途中で失れて……一体どうしただろう。」

七兵衛が口早に語るのを聞くと、二人は冬子を吉岡家へ送り届けて、母のお政に昨夜の※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)の一件や、今日のお葉の一条などを話している中に、思いの外に時が移って、冬の日は早くも傾きかかった。