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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《魔術師(まじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 頁
何と云う滑稽な、併しゾッとする探し物であろう。彼は若しや生首が、どこか目につかぬ場所に隠されているのではないかと考えたのだ。だが、この奇妙な探し物は結局徒労に終った。又賊の手掛りとなる様な品も、何一つ、室内には残されていなかった。例の無数のしおらしい野菊の花の外には。
巡査は日頃、こういう場合に採るべき処置を教えられていた。彼は昔のルコック刑事の様な野心家ではなかったので、その教えをよく守って、一同を寝室の外に立退かしめ、破れた扉を締めて、現場を乱さぬ注意をした上、深夜ながら、警視庁に電話をかけて、事の次第を急報した。
この事が警視庁から係の波越警部の私宅に急報され、警部が二名の刑事を引つれて現場に駈けつけたのは、一時間程のちであった。その間に巡査は玄関や裏口などの戸締りを改め、屋外の足跡を探し、召使達を取調べるなど、手抜かりなく、為すべき事を為したけれど、別段の発見もなかった。庭は乾いていて足跡は残らず、玄関も裏口も戸締りに異状はなかった。無論召使達は何事も知らなかった。
波越警部が来着した頃には、已に所管警察署の人々や被害者の実兄の玉村宝石王も長男一郎と共に駈けつけていたし、その外近所の出入の者などで邸内は非常な多人数となったが、不思議なことに、まるで、唖者の国の群衆の様に、ヒッソリと静まり返ってい