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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「おばさん――」

ただ気を呑まれて自分をみつめているお吉を、そこから冷やかに見て、

「どう? 私の顔……」

と笑った。

だが、お吉には、笑えなかった。

「私の顔――ずいぶん赤いだろう……、昼間、そッと買っておいたのさ、自分でね。――だって、お前、お酒でも飲まなければ、私、生きていられやしないものねエ」

梯子段へ肱をのせて、こういう調子なり姿態なりが、毒婦のように妖美であった。

お吉は、それが川長のお米ではないように見えた。

あの、気の弱い、すんなり痩せ細った容で、咳にまじって出る血を、人目に隠しながら、いつも鬱気でいたお米――それと目の前の人とがどう考えても、同じだと思われなかった。

「どうしたの、お吉」

「お嬢さん……」

「よしておくれよ、お嬢さんなんて、私はもう、生娘じゃない、男のために、さんざんになった女だよ。おまけに、癆咳もちで、長生きのできない、女なんだよ。――だから、いっそもう、したいことを、どんどんして行かなけりゃ損だと、考えなおしたのさ。いいやね、お前、毒婦になったって。――薊の花だって、捨てたもんじゃないからね、黙って、泣いて、踏みにじられたまま、終ってしまう野菊より、棘をもっても、口紅をつけてパッと強く生きている薊のほうが」