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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「おーい、お待ちってば、宅助さん。おーい、森家のお仲間――」

妙に眼ばかりを光らせて、前かがみにあるいていた宅助は、やっとその声に気がついて、

「え? ……ああ」

気のない顔で立ち止まった。

「これは、四国屋のお内儀さまに新吉さんで」

「どうしたんだい、宅助さん」と、新吉が肩を叩くと、宅助はふらりとよろけて、

「どうにもこうにも、まったく弱ったことができましてね」

「その話は、今向うの茶店で聞きましたが、森啓之助様の匿し女、お米という人がいなくなったとか」

「この大阪で、姿を消してしまやがったんで、それを見つけださねえうちは、国元へも帰れません。あ、そして、お店の船は、もう近いうちに阿波へ出ることになりやしょうか」

「荷の都合で少し遅れたから、多分、この月の内には出ないだろうよ」

「とすると――五月の中旬になりますな。じゃ、まだだいぶ間があるから、それまでに、お米の奴を捕まえて、一緒に乗せていただきます。四国屋の船に便乗して帰れというなあ、初めから、旦那様のおいいつけだったので」

「ほかならぬ御家中のお方、船はどうにもご都合をつけますが、そのお米様とやらが、見つからぬうちはお困りですなあ」