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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「いまいましい畜生でさ。だが、宅助の一念でも、きっとそれまでには、お米の奴を取っ捕まえます。ああ、それと新吉さん……まことに面目ねえ頼みだが、少しばかり、当座の小遣銭を合力しておくんなさいな……、恥を話すようだけれど、路銀はみんなお米のやつが持っていたので、今朝からまだ一粒の御飯も腹に入っていねえありさまなんだ」

「ええ、ようござんすとも」

お久良が気の毒がって、五、六枚の南鐐を、手の上へ乗せてやると、宅助の飢えた心は、銀の色にわくわくとおののいた。

「あ、ありがとうござんす」

幾度となく辞儀をした。

そして、思いがけなくありついた南鐐を懐中にして、お久良と新吉に別れて行こうとすると、猫間川の堤に添って、柔い草を踏んで、何か語らいながらこっちへ来る男女がある。

男は――若い浪人である。

形のよい編笠に、黒奉書の袷を着ている。スラリとした中肉に、袷の肌着きがよく、腰には落し目に差した蝋消の大小、素足に草履、編笠をうつ向き加減に、女の言葉を聞いていた。

その人に寄り添ってくる道づれは、小股の切れ上がった江戸前の女で、赤縞の入った唐桟の襟付きに、チラリと赤い帯揚を覗かせ、やはりはにかましげな目を、草の花にそらしながら歩いていた。