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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

それから法水は、その現象をこの事件の実体の中に移した。

「そうなると、勿論この場合、一つの疑題です。だいたい召使などというものは、傍観的な亢奮こそあれ、また現場に達しもせぬ捜査官が、何か訊ねようとして近接する気配を現わしたにしても、それになんらの畏怖を覚えるべき道理はありません。ですから、その時僕は、ある出来事の前提とでも云うような、薄気味悪い予感に打たれました。云わば、過敏神経の劇的な遊戯なんでしょうが、ちょっと口には云えない、一種異様に触れてくる空気を感じたのです。それが明瞭としたものでないだけに、なおさらいてでも近づかねばならぬような力に唆られました。そうして間もなく、貴方の嵌口令が生んだ、産物であるのを知ると同時に、強いて覆い隠そうとした運命的な一人を、その身長まで測ることが出来たのです」

「身長を?」真斎はさすがに驚いて眼をったが、ここで三人は、かつて覚えたことのない亢奮にせり上げられてしまった。

「そうです。あの兜の前立星が、此の人を見よ――と云っているのです」と法水は椅子を深く引いて、静かに云った。「たぶん貴方もお聴きになったでしょうが、拱廊の古式具足のうちで、円廊側の扉際にある緋縅錣の上に、猛悪な黒毛三枚鹿角立の兜が載っていました。