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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
の中に記録されているのだ」とその一冊を書架から引き出したが、それには猶太的犯罪風習が、簡略な例註として記されているのみだった。
一八一九年十月の或る夜、ボヘミア領ケーニヒグレーツ在の富裕な農夫が、寝台の上で心臓を貫かれ、その後に室内から発火して、死体とともに焼き捨てられたという惨事が起った。そして、それには通行者の証言があって、ちょうどその夜の十一時半に、わずかに隙いた窓掛の間から、被害者が十字を切っているのを目撃したと陳述する者が現われてきた。そうなると、兇行時刻が十一時半以後となって、最も深い動機を持っていると目されていた、猶太人の一製粉業者に、計らずも不在証明が出来てしまった。したがって、事件はそれなり迷霧に鎖されてしまったのである。ところがその半年後になって、ようやくプラーグ市の補助憲兵デーニッケによって犯人の奸計が曝露され、やはり最初の嫌疑者である、猶太人の製粉業者が捕縛されるに至った。しかも、発覚の原因をなしたものは、ハムラビ経典の解釈から発している、猶太固有の犯罪風習にすぎなかった。すなわち、死体もしくは被害の個所を、周囲に蝋燭を立てて照明すると、それで犯罪が、永久発覚しないという迷信が端緒だったのである。