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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
そこで僕は、スペードの王様という言を出したのです。何故なら、精神全体を一つの有機体だとすれば、当然そこから、物理的に生起して来るものがなければならぬからです。その非常に暗示的な一言によって、僕は何かしらの反応を期待しました。すると、はたして貴女は、僕の言葉をハートの王様と云い直しました。まさにそのハートの王様です。僕はその時、狂乱に等しい異常な啓示をうけたのでしたよ。しかし、続いて貴女には、二度目の衝動が現われて、突然度を失い、思わず指環を小指に嵌め込んでしまったのです。どうして僕が、その時の、恐怖の色を見遁しましょうか」と鋭く中途で言葉を裁ち切りながら、法水の顔が慄然たるものに包まれていった。
「いや、僕の方こそ、もっともっと重苦しい恐怖を覚えたのですよ。何故なら、骨牌札を見ると、その人物像はどれもこれも、上下の胴体が左削ぎの斜めに合わされていて、それぞれに肝腎な心臓の部分が、相手の美々しい袖無外套の蔭に隠れているからです。そして、その――画像から失われた心臓が、右側の上端に、絵印となって置かれているではありませんか。そうなると、あるいは僕の思い過ぎかもしれませんが、その中で輝いている凄惨な光をどうして看過がす訳にゆきましょうか、ああ、心臓は右に。