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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

「支倉君、窓を閉めてくれ給え」と云った。

検事はキョトンとしたが、それでも、彼のいうとおりにすると、法水は再び死体の妖光を浴びながら、卓子灯に点火した。そうなって初めて検事に判ったのは、その電球が、昨今はほとんど見られない炭素球だと云う事で、恐らく急場に間に合わせた調度類が、永らく蔵われていたものであろうと想像された。法水の眼はその赭っ茶けた光の中で、覆の描く半円をしばらく追うていたが、いま額の跡を見付けたばかりの壁から一尺ほど手前の床に、何やら印をつけると、室は再び旧に戻って、窓から乳色の外光が入って来た。検事は窓の方へ溜めていた息をフウッと吐き出して、

「いったい、何を思いついたんだ?」

「なにね、僕の説だってその実グラグラなんだから、試しに、眼で見えなかった人間を作り上げようとしたところさ」と法水は気紛れめいた調子で云ったが、その語尾を掬い上げるような語気とともに、熊城は一枚の紙片を突き出した。

「これで、君の謬説が粉砕されてしまうんだ。なにも苦しんでまで、そんな架空なものを作り上げる必要はないさ。見給え。昨夜この室には、事実想像もつかない人物が忍んでいたのだ。