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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
不意に装飾灯の灯が消えて、色と光と音が、一時に暗黒の中へ没し去った。と、ちょうどそれと同時に、何者が発したものか、演奏台の上で異様な呻き声が起ったのである。続いて、ドカッと床に倒れるような響がしたかと思うと、投げ出されたらしい絃楽器が、弦と胴をけたたましく鳴らせながら、階段を転げ落ちていった。そして、その音がしばらく闇の中で顫えはためいていたが、杜絶えてしまうと、もはや誰一人声を発する者もなく、堂内は云いしれぬ鬼気と沈黙とに包まれてしまった。
呻吟と墜落の響――。たしか四人の演奏者の中で、そのうち一人が斃されたに相違ない。そう思いながら、法水が凝然と動悸を押えて耳を澄ましていると、どこかこの室の真近から、ちょうど瀬にせせらぐ水流のような、微かな音が聴えてくるのだった。と、その矢先、壇上の一角に闇が破られて、一本の燐寸の火が、階段を客席の方に降りてきた。それから、ほんの一瞬であったが、血が凍り息窒まるようなものが流れはじめた。しかし、その光が、妖怪めいたはためきをしながら、しきりと床上を摸索っている間でも、法水の眼だけはその上方にかれていて、鋭く壇上の空間に注がれていた。